優雅な猫とチェンマイのインジャン
1.
バンコック国際空港が、ドンムアンからスワンナプームへ移動して初めてのそして久々のタイだった。(タイで思い出したけど冒頭から関係ない話で恐縮です。夜のバンコクのミレニアムヒルトンのプールは、昼のクアラルンプールのマンダリンオリエンタルのプールを凌駕したまさに彼岸の場所だったよ。つまり文庫本もいらず平気でゆうに6時間はいられる場所。もちろんドリンクオーダーはやるけどね。)
2日前CNNのニュースで見たこの新空港の突貫工事(手抜き?)によると思われる滑走路に現れた陥没やひび割れの映像が目に焼きついていた私は、到着後深夜2時にチェックインしたシンガポール・チャンギ空港のトランジットホテルで睡眠時間140分で目覚め、早朝4時から空港のカフェでいきなりスコッチをやりだした。不安を口実にただ飲みたかっただけかも。
2時間後いつも必ず行くフードコートで、顔見知りのおばちゃんは私が注文するまでもなく黄色と白2種類の麺をゆでながら呆れ顔で、免税店のお酒のテイスティングでボトル1本飲んだ客ってあなたのこと?それに今、朝ごはんの時間じゃなかった?とやたらbreakfastの単語だけを強調して、私の好きなエビワンタンをトッピングしお椀を手渡す。シンガポールと東京の時差は10時間じゃなかったっけ?と私が言い終わらないうちに彼女は次の客のチキンライスにとりかかる。

1人寂しく丸テーブルで麺を食べ終え、スポーツニュースを流す隣のカフェのソファーに座る。小柄などうみても15才以上には見えない中国系ウェイトレスがにこりと近づくと、私はまたしても反射的にスコッチをロックで、とやってしまう。・・好みだったのばれた?かわいかったんだぜ、本当に・・
搭乗時刻にセットした携帯電話のアラームがソファーの中で鳴り響く頃には、ビスケー湾内に迷い込んだかのような1頭のくじらがふらつきながらも、やっとの思いで搭乗口にたどり着く・・・。
手荷物検査の機械を通す時係員が決まり文句の、ラップトップは、コンピューターは?と聞くので私はラップならおれを見てくれと、エミネムに、いや50セントになりきり大声でめちゃくちゃに歌いだすと、大柄なもみあげの長いマレー系のセキュリティが私に近づく。反射的にその男の腹にけりを1発見舞う。男はびくともせず、にやりと笑い、左手1本で私のあごをつかみフロアーから30センチ上に吊り上げる。観念した私は両手を頭の後ろに組もうとした瞬間、そのままフロアーに叩きつけられた・・・。
目の前には唇の厚い一重まぶたのスチューワーデスが私をやさしく揺り起こし、朦朧とした意識のまま気がついたことは、キャビンの窓から見える滑走路は美しいまでにフラットで、クラックなどあるはずもなく、機内にはバンコックの現在時刻と気温を告げるアナウンスが流れていた。そりゃあそうだ、全ての滑走路が使用不能なら空港は閉鎖だよね。
乗り換え1時間、スワンナプーム空港のトランジットカウンターで私がやったことは、チャンギ空港のあのカフェに連絡をとってもらい事情を説明し、見当たらないと言われた私の携帯にだめもとでコールし、5コールで、前から2番目のソファーのクッションのあいだに奇跡的に挟まっていた私の携帯にでたウェイターと話をしたことだけだった。

昔かなり前ロンドンに初めて行った時タクシーの中に財布を忘れたことが脳裏をよぎり、いつだってこうなのだから仕方ないと妙に納得しつつ、せっかくチェンマイのためにやっと買い換えたモトローラー製ドコモを、世界150カ国で通話できる日はいつになるやら、と考えた私だったのだ。。
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