みすみの串モツ
博多に行くと必ず行く店がある。というよりそこに行くために博多に行くのだ。その名は”ホルモン みすみ”(★)。東京へ戻ってひと月たつと、もう心が、いや舌が内臓が みすみに行きたいと叫ぶ。この間なんか、事前に買った格安チケットのスカイマークエアラインの搭乗15分前に羽田空港の搭乗カウンターに着いたのに、「飛行機までの乗客専用移動バスが出た為、乗れない」と冷たい一言<←・・・ケチ>
向かう途中、スカイマークエアーラインへギリギリになるかもしれないと事前に電話連絡を入れているのにもかかわらず、「無理です」の一点張り。まっ、格安だから仕方がないにしても、もし私が有名人だったら対応が全く違うのだろうな〜。と少々腹立つ。何がなんでも飛行機に乗るんだ!と妙なパワー が沸き起こり、「まずは福岡のチケットをGETしなくては!」と空港のJALのカウンターで携帯を取り出し、JALのお姉さんに教えてもらいながらチケットを購入(iモード予約のほうが安く購入できるのです)。
とそんなこんなで、半年ぶりの1泊2日福岡 みすみツアーへ。まず午後3時半にグランドハイアットホテル(※1)のカクテルラウンジのスツールに腰かけ、生ビール1杯、追いかけるようにドライマティニを2杯。連れが来るまでまだ時間があるので、そこから階段の上のラウンジでソファーにすっぽり体を沈め、ハウスワインの赤のグラスを楽しむ。これがいつ飲んでも軽い渋味とチェリーっぽい香りが絶妙でたまらなくビューティフル。ついでに言うと、このハイアットにあるもう一つのバー マティーニーズのギムレット。味はもちろんなめらかな舌ざわりと温度とそのライムのほどよい香りとで、私の中の博多NO.1だ。
出版社の編集者をやっているY氏ついに登場。しきりに祇園の「うま馬冷泉店(※2)」に私を連れて行きたがる、・・・あのカリカリ感とジューシーな肉汁の餃子にチリワイン(エラスリスだったかなぁ〜?)・・・が拒否。
次に鳥飼の「たんや 卜傳」(※3)・・・ひと月吊るして寝かした牛タン丸々1本の半分以上を包丁でそぎ落とし、中心部の真に熟成され、イノシン酸、グアニル酸、グルタミン酸(本当にこんな成分が出てるかは測定したわけじゃないけどね)の宝庫と化した最高級の黒毛和牛のタンの切り身・・・。
それも断ると、同じ春吉の「モツ鍋屋 かわ乃」(※4)、・・・キャベツも豆腐もちゃんぽん麺も決していらない、モツだけで勝負してくれる・・・。しかし頑としてうけつけず、Yの腕を強引に引っ張り二人で中洲を通りぬけ橋を渡る。春吉に入り2つ目の角を左折しまた3つ目を右へ曲がると路地の左斜めに外見はしょぼいが、燦然と光輝く 「ホルモン みすみ」だ。
時刻は5時少し過ぎ、店の引き戸を開けると中はまだ開店前で暗い。狭いカウンター越しに声をかけると奥からのっそりとマスターが出てくる。何でも横浜ベイスターズの若田部の親戚らしい。前方の壁には日本ハムの新庄の実家の造園屋のカレンダーが貼ってある。たまに新庄のおやじさんも来るのだ。
カウンターの内側にあるおでん屋のタネを入れるケースのようなものはやや茶色みがかった白っぽいスープがすでに入っていて、マスターがガス栓を開きマッチで火をつける。私が焼酎の芋のお湯割をグビリグビリとやってると、マスターは湯通ししたあと天日で乾燥させた、串に刺してある牛モツをしっぽりとスープの中に横一列に浸し始める。せんまい、ハツ、腸などのモツのオールスターが2種類に分けて串に刺してある。組み合わせは行ってからのお楽しみとしておこう。メニューはこれだけ。ビアグラスの芋焼酎が2杯目の終わりにさしかかるころ、豚骨ラーメンのものとも長崎ちゃんぽんのものとも違う白みそを溶かしこんだ(ここの“コレ(モツ)”しか出せないうまみが、最高純度で引き出された)スープが沸騰し、マスター自らの最初だけの儀式とも言える、スープの入った3本の串の取分けが完了。私たちのカウンターにはあの、串モツの皿が鎮座まします。この湯気から立ち上るにおいがたまらなく食欲をそそってそそってそそりまくる。
小皿の博多万能ねぎのみじん切りをスプーンで3回すくいあげ串モツに落とし耳掻きくらいの小さ じで2杯一味唐辛子を串全体にふりかける。さあ、いよいよ半年ぶりの待ちに待った瞬間。まずはスープだ、うっ、うますぎる。串をつまみ上げ、せんまいだ、モツとスープとねぎと一味唐辛子のパーフェクトハーモニだ。間髪おかず、白だ、またスープをすすり、ハツだ、見る間に4本がなくなる。ここからは自分で手を伸ばし2本ずつ皿に入れスープをかけ、ねぎと一味をはらりとふりかける。煮えたものからマスターが手前に入れ替えてくれる。このくりかえしの連続で、私たちの串立てに空いた串が20本30本とたまっていく。8席程度のカウンターはうまり、奥の茶の間にも客が上がりこんでいる。店に入れず口惜しそうに帰っていく客があとをたたない。
芋の焼酎のお湯割りはすでに8杯目を超え、マスターとの会話はいつものように、いかにこの串モツがうまいかをさまざまな実例を持ち出し絶賛しっぱなし。この日はジャンルが違うのは100も承知で4日前北千住の焼き鳥や 「バードコート」(※5)で食べたモモの付け根の部分、ソリを引き合いに出しお互いの相乗効果を利用しながら、串モツを西の串の王者に崇め奉った。これまで65本が私の最高記録だ。最近の私の基本ポリシーとして欲望は80%に抑え、ネクストチャンスにとっておく。そのほうが人生ハッピーなことに気がついた。
串立てに串が入りきれなくなる前にお勘定をたのむ。「もう帰ると?」とマスターが云いながら串を数える。1本120円×56本だ。連れが勘定を済ませる。「次はいつ来れるかわからんからこのままここにテント張って泊まりこむか」とか、「早くハワイに支店出してよ、おれ借金踏み倒して国外逃亡して店長やるから」とか、「弟子入りしたらレシピ500万で売ってくれる?」なんて散々くだをまきながらマスターに別れを告げる。
中洲のスナックの(だれが見ても私に気がありそうな)22歳の中国人女子留学生や天神で知り合い部屋に3回ほど行きはしたが楽しみをあえて先延ばしにしている26歳の佐世保出身のOLなんかより、どれほど名残惜しいことか。
店を出るとまだ20時だって言うのにもう一日が終わった気分。それでも月明かりの春吉橋をふらつきながらJAZZCLUB リバーサイドへ向かう。キース・ジャレット スタンダーズトリオのメロディーラインが大好きなんだ。
博多の夜は素晴らしい。 2004.9.11
【文章内でご紹介したホテル・お店の情報】
★ホルモン みすみ:福岡県福岡市中央区春吉3-24-21
メニューは串もつと酒だけ。白味噌をとかしこんだスープに浸る串もつのうまいことうまいこと。他の追随をゆるさない。串もつの王者。
※1:福岡グランドハイアットホテル :http://www.grandhyattfukuoka.com
福岡に遊びに行ったときはココのホテルはオススメ。日本第一号のグランドハイアット。
※2:うま馬冷泉店
平たいストレート麺に特性スープの創業以来の味を守っている「博多のラーメン」のお店で、ワインの品揃えも豊富。餃子の焼き上がり感も上々で、串焼きもていねいに仕上げてくれる。
※3:たんや 卜傳:福岡県福岡市中央区鳥飼2-1-48
黒毛和牛のタン、テール等の部位の、ここのこれしかない味。分厚いタン焼きはまさに絶品。
※4 モツ鍋屋 かわ乃 :福岡 春吉公園前。
40年近い歴史のある一見さんお断りの知る人ぞ知るお店。ずっと紹介がないと入れなかった。
※5 バードコート :東京都足立区千住3-68
もう今や有名な焼き鳥店。HPないためここでチェックしてみてね。
北千住サンロード商店街公式ページ
http://www.adviser.co.jp/kitasenjyu/kitasenjyu3_s.htm |